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左心低形成症候群の娘、きょうだい児の2人、ひとり親、ドタバタの日々。

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左心低形成症候群(HLHS)|病気の特徴と4回の手術を含めた闘病記録まとめ


生まれつきの心臓病のことを「先天性心疾患」といいます。
治療の必要がないものから、生まれた直後に手術が必要なものまで様々ですが、およそ100人に1人が心臓に何らかの異常を抱えて生まれてきます。

我が家の三女もその1人。
これからお話しするのは、彼女が生涯共存することになった心臓病についてです。

左心低形成症候群」

”さしんていけいせいしょうこうぐん”と読みます。

 

左心低形成症候群(HLHS:Hypoplastic Left Heart Syndrome)は、先天性心疾患の中でもさらに100分の1の確率。
難病情報センターのホームページによると、1.2~1.6%との記載がありました。

おおよそ、1万人に1~2人生まれることになります。

  • 手術の成功率は何%くらい?
  • 元気に生きている子はどのくらいいるの?
  • 寿命はどのくらい?
  • 成人することはできるの?

 

当時、私が知りたかったことをまとめました。
このままお読みいただくと、左心低形成症候群について知りたい情報が見つかるかもしれません。

どうぞこのままお進みください。

 

【ご了承ください】
同じ病名であっても症状や治療方針は異なります。
こちらでは、我が家の三女が受けた治療の流れに沿ってお話していきます。

 

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妊娠34週、薄暗い心エコー室で小児循環器医からの宣告を受けました。

おなかの赤ちゃんは、何らかの重い心疾患を必ず・・持って産まれてきます。
複雑心奇形と言われるものです。

 

初めて、頭が真っ白になるという経験をしました。
目にうつる世界からは一瞬で「色」が失われたような、それほどに強いストレスだったことは間違いありません。

突然日常から切り離されてしまったような恐怖、絶望、悲しみ、そして強い強い罪悪感で心がいっぱいになりました。

どんなに歯を食いしばっても嗚咽は止まらず。
診察を終えて家族の顔を見た私は、何度も何度も謝りながら、子どものように声を上げて泣きました。

 

「左心低形成症候群」について

左心低形成症候群は指定難病

左心低形成症候群は、先天性心疾患の中で最も重症度の高い疾患とされています。
診断確定は代表的な所見によってなされますが、ほかに疾患を持っていることも多くあり、症状や治療方針はそれぞれ違います。

2015年7月からは、厚生労働省の指定難病211です。
一生根治することはありません。

  • 心室の低形成
  • 僧帽弁の狭窄、または閉鎖
  • 大動脈弁の狭窄、または閉鎖
  • 上行大動脈の低形成
  • 卵円孔(心房中隔欠損の場合もある)の開存
  • 冠動脈への逆行

 

心臓は4つ(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれていて、左側が体循環、右側が肺循環を担っています。

血液が心臓を出て全身に至り、毛細血管を経て再び心臓に戻ってくる循環を体循環といいます。 一方、心臓を出て肺を通り心臓に戻る循環を肺循環といいます。
体循環と肺循環|解剖・病態編(テキスト解説)|循環器疾患講座|Adalat.jp

 

左心低形成症候群は、名前の通り左心室の低形成があります。
全身に血液を送るためのポンプ部分が低形成です。
僧帽弁の狭窄や閉鎖、大動脈弁の狭窄や閉鎖、上行大動脈と大動脈弓の低形成があります。

  • 僧帽弁(左心房と左心室との間の弁)
  • 大動脈弁(左心室から繋がる上行大動脈への弁)

 

そして、卵円孔(時に心房中隔欠損)による心房間交通があることがほとんどです。
卵円孔は胎児期には誰にでもあるもので、生後まもなく閉じてしまいます。

  • 心房中隔欠損:俗にいう「心臓に穴が開いている」という状態
  • 心房間交通:左心房と右心房の間に穴が開いていて血液が流れる状態

 

主治医の言葉memo

左心低形成症候群が起こる原因は、おなかの中で心臓が作られる時期に、左右にバランスよく血流が流れなくて、偏りができてしまったことで起こるんじゃないかと。
遺伝的な要素がある場合はもちろんありますが。
三女ちゃんの場合、その可能性はありません。

 

最重症心疾患である理由

肺できれいになった血液は、肺静脈を通って左心房に戻ってきて、左心室へと送られて、大動脈を通って全身に流れていくのが本来の循環です。

>>>心臓のきほん1.心臓はどこにあるの?どんなかたちをしているの?【東京女子医科大学 心臓血管外科】 

 

心室や弁の形成には個人差があり、三女の弁はどちらも閉鎖しています。

肺静脈→左心房→僧帽弁の閉鎖→左心室へ血液の流入がない=左心室が大きくならない→大動脈弁の閉鎖→上行大動脈に血液が流れていかない=血管が太くならない(低形成)となります。

この状態で心房間交通がなければ、肺から戻ってきた血液の行き場はありません。

 

体循環があってこその、肺循環。
全身に血液が巡らないということは「=死」です。

ただし前述したように、左心低形成症候群では心房間交通があります。
左心房から右心房へと血液が流れていき、きれいな血液(動脈血)と汚れた血液(静脈血)が混ざったまま、右心室から肺に送られます。

心房間交通が狭い場合には広げる処置(バルーンなど)も必要ですが、三女は必要ありませんでした。  

 

胎児期に生存できる理由

心房間交通があるだけでは全身に血液は巡りませんが。
産まれたばかりの赤ちゃんには、大動脈弓と肺動脈を繋ぐ「動脈管」という血管が存在します。

  • 大動脈弓:上行大動脈と下行大動脈の間にある弓状の部分
  • 肺動脈:右心室から肺へと流れていく血管

 

右心房から肺動脈を流れて肺に送られる途中で、動脈管を通って大動脈(大動脈弓と下行大動脈)へと分岐していくため体循環が成立します。
そして本来の血行動態とは逆行(逆の流れ)する形で、上行大動脈へと血液が流れて冠動脈へと送られます。

  • 本来:左心室→大動脈弁→冠動脈へと動脈血が流れる
  • 左心低形成症候群:右心室→肺動脈弁→肺動脈→動脈管→大動脈弓→上行大動脈→冠動脈へと動脈血と静脈血が混ざったものが流れる

 

動脈管は胎児期から存在し、大抵の場合は生後間もなく閉じてしまうものです。
これをプロスタグランジンという点滴で閉じないように(開存)しておくことで、生存が可能になります。

動脈管依存性先天性心疾患です。
ただし、プロスタグランジンの効果は平均3ヶ月です。

三女には提案されませんでしたが、ステント留置で開存させている場合もあります。  

 

動脈管の開存だけでは生存できない理由

左心低形成症候群は、肺血流増加型の心疾患です。
生後4~5日経つと肺血管抵抗が下がり、肺に血液が流れやすい状態となります。
肺血流が増加してくると逆に全身への血流量は乏しくなってしまい、以下のようなトラブルが発生します。

 

この時期には、血中酸素濃度(SpO2)も一気に80前後まで下がります。
チアノーゼ性心疾患でもあります。

本来であれば左心房から上行大動脈へ送られた直後に、大動脈弁のすぐ上にある冠動脈へと流れていかなければいけません。

先程「胎児期に生存できる理由」で述べましたが。
血流は逆行、冠動脈に届けられるのは動脈血と静脈血の混ざったもの、これはつまり”常に心筋梗塞の危険性と背中合わせ”の状態です。

冠動脈は、心筋に酸素や栄養を送り届けるための血管です。
それがままならないことがどれほど危険なものか。

 

この疾患は、血行動態の管理が極めて難しいものです。
妊娠中にわからなかった場合、処置が遅れて亡くなるケースや、手術まで持たないことも少なくないと聞きました。
手術まで持ったとしても予後はよくなく、長期生存はまだまだ難しいとされています。

現に10~15年前には大半の子が助かりませんでした。
治療できる施設、手術のできる医師の数が限られているのです。

 

病気の説明が長くなりましたが、ここで一区切りとなります。

子どもの心臓病に関しては資料となる本が少なく。
初めて先天性心疾患の勉強をされる方におすすめしているのは、メディカ出版「こどもの心臓病と手術」です。
ひとつひとつの説明が丁寧で、わかりやすい言葉で書かれています。

 

 

両側肺動脈絞扼術、およびノーウッド手術・両方向性グレン手術

2015年9月に両側肺動脈絞扼術(肺動脈バンディング)を終え。
体重の増加を待って、2016年1月にはノーウッド・グレン手術へと到達しました。

術後8日目には乳び胸が発覚、残念ながら内科治療では改善せず胸管結紮術(乳び胸手術)を受けています。

 

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術前評価のための心臓カテーテル検査

2017年5月には、術前評価のための心臓カテーテル検査を受けました。
フォンタン循環となってからのこと、保育園・幼稚園、小学校での生活、運動制限など、小児循環器の主治医の説明も記載しています。 

 

 

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フォンタン手術(TCPC)

2017年8月には、フォンタン手術(TCPC)を終えました。
フォンタン術後症候群、フォンタン循環での寿命について、循環器外科の主治医に質問した内容を記載しています。

2020年1月現在は3ヶ月置きの定期健診と、毎日の服薬でとても元気に過ごしています。
ここまで到達できるのはおよそ50%です。

 

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最後にまとめ

私たちが「三女を看取る」可能性がどの程度なのか。
健常児を育てているよりは、恐らくずっと高いものだと言えるでしょう。

何年経っても受け入れ難い事実です。

心臓病であること、障害児であること、それを忘れる日はありません。
三女が1日も長く元気で、そして1日も長く生きてくれますように、そうやって日々祈りながら暮らしています。

三女と出会えたこと、家族になれたことは、人生最高の喜びです。
「色」を失われた世界は以前より輝いていて充実しています。

不幸ではないと言い切れます。

 

世の中にはたくさんの疾患があって。
目に見えるもの・見えないものがあって。
目に見えない障害(=内部障害)を持っている方が、無理解に苦しんでいる現状もあります。

「普通の子(人)と変わらないよね」
このひとことは救いでありながら、時に傷つける言葉にもなります。
当事者も、家族も、人知れず葛藤をしているものです。

 

身近にないことを知るのは難しく、簡単に理解もできないでしょう。
それでもここで「ある」ということだけでも知って、もしも触れ合う機会があれば手を差し伸べてください。

障害者の家族は大きな孤独の中にいることがあります。

 

2021年7月、国立成育医療研究センターで「重症大動脈弁狭窄症」の治療が行われたとの報道がありました。
妊娠25週の胎児に対しての、国内初の胎児治療だそうです。

重症大動脈弁狭窄症は、胎児および新生児の生命にかかわる症状を引き起こす、発生頻度が出生1万人あたり3.5人という非常に稀な先天性心疾患です。

左心室の出口が極端に狭いため左心室に過度な負担がかかり、心筋が著しく厚く、左心室内が小さくなる左心低形成症候群という病気や、心臓の働きが悪い状態となります。

先天性の重症大動脈弁狭窄症に対して国内初の胎児治療を実施 ~本臨床試験が進むことで、今後の治療法の確立に期待~ | 国立成育医療研究センター

 

生まれてきた赤ちゃんは、生後の経過も良好とのこと。
1人でも多く救われる命が増えることを、元気に産まれてこられる命が増えることを、心から願っています。

医療の進歩を、三女の生命力を、私たちは信じ続けます。

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